飯能市エコツーリズム推進全体構想

里地里山の身近な自然や文化を活用した飯能市エコツーリズム

飯能市は、埼玉県南西部の都心から50km圏内に位置し、豊かな自然環境に恵まれた良好な住環境と都市機能を有するまちです。また、市域の約76%を森林が占め、山々の間を流れる入間川、高麗川は、私たちの生活に潤いと安らぎを与えてくれます。このような地域特性を生かし、本市では森林文化都市宣言を行い、自然を守り育てることを市民の目標としています。2004年に環境省より、エコツーリズム推進モデル地区に指定をいただき、「すべての地域と人の参加」を基本方針に掲げ、推進協議会を中心に地域住民とともに、身近な自然や地域の人々の生活文化などを資源として、エコツーリズムの推進に取り組んできました。エコツーリズム推進法に基づき設置した「飯能市エコツーリズム推進協議会」により、地域住民、事業者、NPO法人等との役割分担の下、エコツーリズムを適切かつ効果的に推進するため、その基本的枠組みを定めた「飯能市エコツーリズム推進全体構想」を作成していただきました。そして、この全体構想について主務大臣に認定申請を行い、このたび全国で第1号となる認定をいただくことができました。今後も、エコツーリズムによって地域の個性と魅力の源である自然を保全し、人と自然に育まれてきた文化を継承しながら、これらを有効に活用し、多くの人に心の豊かさと感動を与える旅を提供するとともに、そこに暮らす人々が地域の魅力を再発見し、地域の活力につなげるようにしたいと思っております。そして、「エコツーリズムのまち飯能」をアピールし、全体構想の実現に向けてなお一層エコツーリズムの推進を図っていきたいと考えております。むすびに、全体構想の作成にご尽力いただきました推進協議会委員の皆様、ご指導とご助言をいただきました国・県の関係機関の皆様に、心よりお礼を申し上げます。

1 里地里山の身近な自然と文化


身近に自然が残る天覧山周辺
飯能市は、丘陵地の雑木林から山地の植林・自然林まで多様な樹林が分布し、源流域から中流域までの変化に富んだ河川環境が見られ、こうした自然は多様な野生生物を育んでいます。また、古民家の残る街道や、郷愁を誘う山村の集落の風景、そこで営まれてきた生活も貴重な文化資源となっています。飯能市では、こうした豊かな自然資源や歴史文化資源、地域の個性ある生活・習慣などを生かしながら地域の活力や経済の振興につなげていくためには、エコツーリズムの導入が有効な手段であると考えました。既存の取組みとの連係と効果的な実施を図るため、共通の目標を設定し認識を高めていくことや、市民の参加による取組みを推進すること、埋もれている自然・文化資源を再調査し、活用方法を確立していくことなどを目指して、2004年に環境省が進めるエコツーリズム推進モデル事業の「里地里山の身近な自然、地域の産業や生活文化を活用した取組み」に応募しました。エコツーリズム推進モデル地区の指定を受けて、学識経験者、自治会等の代表者、農林業・商店街・観光事業の関係者、自然保護や環境保全活動をしている者等を委員として「エコツーリズム推進協議会」を設置し、市及び推進協議会が中心となり、飯能市エコツーリズム基本方針、飯能市の目指すエコツアーやエコツアーの質を確保するための仕組みを構築しました。

2 エコツアーのガイダンス


地元のお母さんがおまんじゅうづくりを教える
飯能市のエコツーリズムは、基本方針の一つとして「すべての地域と人の参加」を掲げています。自然環境とともに生活文化や伝統をエコツアーの素材とすることによって、専門的な知識や技術を持つ人だけでなく、誰もがガイドになれるエコツーリズムを目指しています。実際にガイドとしてエコツアーを実施しているのは、地域住民やNPO団体、身近な仲間のグループなど市民の方々です。この市民のガイドが、人の手によって守られてきた自然と生活文化のある里地里山を「地域に住む人が、地域の言葉で、地域をガイドする」というのが飯能市のエコツーリズムとなっています。そして、市民一人ひとりの個性とおもてなしの心、来訪者を楽しませようという気持ちを大切にしています。

3 身近な自然と生活文化が「宝物」


木工のノウハウを教える
飯能市のエコツアーは、特別なものを題材としているのではなく、自然環境や歴史、生活文化など地域にあるものを活用してツアーとしています。 身近な自然と地域の人々が持っている生活の知恵、衣食住の技術などの「宝物」を地域の人達と一緒に掘り起こし、エコツアープログラムを開発しています。

4 環境保全へ


新しい自然保護の形を提案するツアー
飯能市のエコツーリズムは、基本方針の一つとして「自然を保全・再生し、文化を継承して将来に伝える」を掲げています。これまでに、里山の竹林で竹の間伐を体験するツアーや漁協の組合員と一緒にブラックバスを駆除し、水域の生物多様性を保全するツアーなど、直接的に環境保全に役立つツアーを行っています。これらのツアーは、従来の自然保護に強い関心を持つ人がボランティア的に実施しているスタイルではなく、エコツアーによって楽しみを付加することで、これまで自然保護活動に参加していなかった人たちが参加するという新しい自然保護の形を提案しているといえます。また、木材の地産地消を学ぶツアーや、川の水生生物を観察し、川の環境について学ぶツアーなど、間接的に環境保全に役立つツアーも実施しています。全てのツアーで、エコツアー実施者と事務局(市)が、自然の保全や廃棄物の抑制などについて協議を行い、間伐材で作った食器の利用や、使い捨て容器の利用抑制、公共交通機関の利用促進などの環境保全に取り組んでいます。 エコツアーに参加した人が少しでも環境について考えてもらえるようにプログラムの企画段階から配慮し、エコツアーを実施しています。

5 地域活性化へ


里山の生活文化にふれるエコツアー
平成26年度は121のエコツアーを実施しました。これらは全て、市内の住民団体やNPOなどが企画・実施しました。地域住民自らがエコツアーを企画・実施することによって、地域の自然や文化を見つめ直し、来訪者との交流を通じて、地域への誇りと愛着を育むことにつながっています。また、飯能に移り住んできた人もエコツアーのガイドとして活躍しており、こうした人が新たな視点から飯能の魅力を発掘し、発信しています。さらに、エコツアーの企画、実施段階でこれまでになかった「世代を越えた交流」、「新住民と旧住民の交流」、「都市住民と地元住民の交流」及び「専門家やNPOと地元住民の交流」などの様々な交流が生まれています。このようにエコツーリズムは、地域への誇りや様々な交流を生む源となることから、飯能市では、人口減少と高齢化が進む山間地域や、中心市街地の活性化にエコツーリズムを生かしています。また、産業の振興という面でも、江戸時代から著名な西川材を利用した家づくりや原木市場を紹介するエコツアーを実施するなど、エコツアーを地域の伝統産業の活性化につなげる試みをしています。さらに、遊休農地を活用したエコツアーを実施し、農地の有効利用にも役立てています。

6 エコツアーの質の確保


ツアー企画者との下見の様子
エコツーリズムを推進していくためには、多くの方々にエコツアーの実施者として取り組んでいただくことが必要です。しかし、エコツアーが増えてくると、エコツーリズムの目的や考え方から逸脱した単なる見学会や体験ツアーが増えてくる可能性も生じてきます。そこで、エコツアーが基本方針や飯能市の目指すエコツアーとなるように、エコツアーの内容について事前に確認・協議を行う事前協議制度を実施しています。協議内容は、エコツアーの概要、ルート・タイムスケジュール、募集人数、料金、ガイド・運営スタッフ、安全対策、環境の保全・環境への配慮、地域住民の参加・協力などとなっています。また、この制度は、飯能市で行われるエコツアーに関する情報の集約による効果的な推進や、エコツアーを企画・実施する方々の意識向上、更にはエコツアーを企画・実施する方々の相談窓口として役立てることも目的としています。また、エコツアーには事務局が同行し、ツアーのスケジュールや内容、スタッフの対応などについて確認しています。ツアー後に改善点などを記載したモニタリングシートを作成し、参加者のアンケートとともにツアー実施者に送り、次回のエコツアー実施に活用しています。

7 人材の育成


オープンカレッジ(ガイド養成講座)の様子
エコツーリズムの基礎的な知識や、飯能市の自然や歴史文化、ガイドの技術などを学び、エコツーリズムの推進に積極的に関わる市民の育成を目的として、「ふるさと案内人になろう(エコツーリズムオープンカレッジ)」を開催しています。この講座では、エコツアーのガイドを行うための知識や技術を身につけ、飯能市の魅力を自分達の言葉で伝えられるよう、魅力的な伝え方や解説の練習、ツアーの運営などを実習しています。この講座の修了者の多くは地域で実施されるエコツアーのガイド・スタッフとして活躍しています。